現代アボリジニアートの作品展
さらに左手奥の部屋。ディジュリドウの演奏を聞いたこの部屋では、同じく『Reconciliation Week』のイベントの一つとして、『Art from Areyonga』が開催中でした。Areyongaから届いた、現代アボリジニアートの絵画と工芸品の作品展です。ちょっと調べたところによると、Areyongaは中央オーストラリア(アリススプリングスの方)のアボリジニの居住区のようですね。絵画は色彩豊かで、幾何学模様の繰り返しパターンを特徴にして、とても綺麗です。また、その文様の中に、どことなく、なじみを感じるものがありまして。日本の伝統の文様、たとえば重なる波を図案化した「青海波」のような文様があったりして、こういうセンスというのは万国共通のものなのでしょうか。ガイドツアーでご一緒した方に、「この紋様は日本にもある!」とはりきって話したりしましたが、外国で日本と似たものを見つけると何だか嬉しいのです。
ちなみに、私はこの手のアボリジニアートを見るといつも、ミトコンドリアだとか細胞の形状のように、分子生物学的なデザインだよなあと思うのです。彼等の文様には意味があって、例えばカンガルーの足跡とか泉などを表現した文様を組み合わせて絵が描かれているんですが。実はそれ以外にも、文様の中にとんでもない秘密が隠されているんじゃないか?と、妄想したりすると色々楽しいです。古代文明といったら、エジプトだとかナスカの地上絵だとかはよく研究されていますけど、アボリジニの古代文明についても、もっと考古学的な見地から研究が行われれば面白いですね。キンバリーの先祖の神様が何だか宇宙服のような格好をしていたり、有名なカカドゥにあるレントゲン写真のような壁画など、オーストラリアにも『失われた古代の超文明』ってのが、あったりして?
まあ、そんな夢物語はさて置きまして。
ここのアートを見ていた時、私はどことなく違和感を覚えました。その違和感が何か、思い当たらせてくれたのが、タンダーニャにあった日本語の案内文です。そうです!タンダーニャには、中国語等の他の言語に混じって、日本語のA4一枚の案内文が用意されています(思っていたより、オーストラリアの観光地で日本語の説明文を見かける機会が少ないので印象的なのです)。
その案内文の一部を抜粋しますと、
『伝統的には、原住民美術は、岩や木に描かれたり、人の体に描かれたりする他、岩に刻み込まれたり、砂に描かれたり、木に彫り込まれたり等の形で行われてきました。今日、原住民作家はキャンパスとアクリル絵の具、布地、写真、マルチメディア等を含む種々多様な手段・手法を使い、材料についても広範囲の材料を実践的に使用しています。』
私の違和感は、アボリジニの伝統的なアートが、ヨーロッパ式のキャンバスに描かれていた所にあったんですね。整然とした長方形のキャンバスの中に、奔放で原始的なアボリジニのアートがきちりと収まっているのです。ヨーロッパとアボリジニの文化の融合といえば、何だか響きは良いのですが、現代のアボリジニ達が抱えている、複雑で『難しい』文化を垣間見たような気がします。
アデレードの博物館に、彼等の先祖が残したアボリジニアートが展示されていますが、それらは木の皮に描かれています。そして、木の皮に描かれた絵は、アートであると共に、自然への深い祈りの心を感じます。それは芸術というよりも信仰だと思うのです。ここの展示物でそれがあったかは忘れてしまいましたが、現代のアボリジニ達は、車のタイヤを平らにしてそれに絵を描いたりもしています。単純に好みの問題だけだと思うのですが、私はタイヤに描かれた絵よりも、木の皮に描かれた絵の方が好きですね。